著:ミッキー・フェール
キーポイント
- マインドセットとは、状況をどのように解釈し、対応するかを決定する精神的姿勢のこと。
- メタ・マインドセットとは、人生に対する大局的な明瞭性であり、世界に対する基本的な姿勢。
- マクロ・マインドセットは、エネルギーを持続させ、ビジョンを実現するための精神的な鍛錬や方法に関連する。
- ミクロ・マインドセットは、ベンチャーのための持続可能な道筋を構築するために必要な、具体的な行動を生み出す。
マインドセットとは、人が状況をどのように解釈し、対応するかを決める精神的な姿勢のことを言います。
ロバート・B・ディルツとの定性的研究において、マインドセットには明確に異なる3つのレベルがあることを発見しました。
今回の投稿ではこれを紹介しましょう。
マインドセットが持つ力を示す良い事例として、カタリン・カリコの物語を紹介したいと思います。
カタリン・カリコとは、RNA分子を書き換えることによって有害な免疫反応を回避する研究が成果を出し、ノーベル生理学・医学賞を受賞した研究者です。
しかし、彼女の人生は拒絶と疑いに常にさらされるものでした。
それでも、こうした功績を残すことができたのは、彼女のマインドセットが大いに関係しています。
最初のレベルであるメタ・マインドセットは、その人の「人生の旅路」という感覚に対する明瞭性が関係しています。
これは自動車のダッシュボードのようなもので、方向性を示し、説得力のあるビジョンと目的を与えてくれます。
また、長期的なゴールや役割を設定するための明瞭性をもたらしてくれます。
重要な出発点となるのが、その活動に喜びを見出し、のめり込むことができるかどうかという点です。
これがあるからこそ、仕事でもプライベートでも将来の軌道を切り開く原動力になります。
カリコは1955年1月17日、ハンガリーの小さな村で生まれ、幼いうちから科学者になるというビジョンを抱いていました。
父親が精肉店を営んでいたこともあり、彼女はある意味で「生物学」に触れながら育ちました。
10代の頃から、彼女はメッセンジャーRNA(以下mRNA)に魅了されるようになりました。
mRNAとは、タンパク質を作る細胞のエンジンにDNAからの指示を伝える遺伝子上の台本のようなものです。
彼女のビジョンは、mRNAが何らかの形でさまざまな病気の治療に極めて重要な役割を果たし得るというものでした。
そして、そのビジョンを現実のものとし、患者の治療に役立てることが彼女のミッション(使命)となりました。
しかし、ビジョンやミッションがいくら明確であっても、自分の内なる精神面と外側の世界の両方から障害は現れるものです。
ここで、マインドセットの2つ目のレベルであるマクロ・マインドセットが重要な役割を果たします。
私たちはこのマインドセットを「スターライト(星の光)」と呼ぶことがあり、長期的ゴールに焦点を当てることが関わっています。
このスターライトは、いくつかの活動と特質の組み合わせによって得られることがわかりました。
そして、その活動に含まれるのが、メタ・ゴールと私たちが呼んでいる重点項目の設定です。
メタ・ゴールがあることで、複数の行動の選択肢に優先順位をつけることができます。
カリコは、「意義ある貢献」に人生を集中させることにしました。
活動を継続するためには、内面で安定したリソースフルな状態が必要であり、エネルギーの充電とバランスを保つ方法を持ち、毎日それらを実践することが必要です。
つまり、セルフケアができる特質です。
カリコのバランス維持と充電の源は、彼女の家族でした。
仕事を持つ女性の多くは、母親業と仕事を両立させなければならないというジレンマによく直面します。
カリコは常に、「女性だからといって、科学者としてのミッションと、母や妻としてのパッション(情熱)のどちらかを選ぶ必要はない」と信じていました。
もう一つの重要な習慣は、常にチャンスを探し求め、チャンスを生み出すために時間を投じることです。
これには好奇心というマインドセットの特質が関わっています。
カリコは母国での研究資金不足に直面しました。
そして、自分のミッションとは無関係な活動に従事することで研究を中断するか、母国を離れるという代償を払ってでも研究を続けるかの選択を迫られました。
1985年、すでに結婚し、幼い娘の母でもあった彼女は、夢を追い求めるためにハンガリーを離れる決心をします。
まさに探求者としてのマインドセットを体現する彼女は、世界中で就職口や奨学金を探し回り、
最終的にフィラデルフィア州テンプル大学からの博士号取得後の特別研究員のオファーを受けることにしました。
イノベーションとレジリエンスを発揮すべき時が来たのです。
カリコは夫とともにすべてを手放し、知り合いが一人もいないアメリカへの片道切符を購入しました。
リスクを意識しながらも、逆境や否定的な意見に落胆しないことが、その時の彼女にとって非常に重要でした。
その決意とレジリエンスは、彼女のメタ・ゴールと強いビジョンの感覚、そして高い受容性を反映していました。
受賞スピーチで彼女が言ったように、「夢を追いかけること。そしてどんな人からでもためらわずに学ぶこと」を彼女は実践したのです。
マインドセットの3つ目のレベルであるミクロ・マインドセットは、日々の優先順位を設定するための「スポットライト」の役割を果たします。
このマインドセットレベルの重要な要素は、
セルフモチベーター(自分の大好きなこと、自分にとって大切なこと、自分が得意とすること、つまり、自分のパッション、目的意識、卓越性を探究し、再びそこにつながるための時間が確保できる人)となって、
自分が情熱を注ぎたいことや自分の目的に毎日集中することです。
カリコの言葉を借りれば、
「同僚たちと一緒に、この技術を見つけるために何年も取り組みました。
時には、それがSFじみていると思えることもありました。
けれど、私たちの研究の成果がたった一人の命を救うことができたなら、それで私たちはやり遂げたといえるのです。」
自分が大切に思うことに毎日集中することで、
彼女はコピー室で偶然にも仕事のパートナーでありチームメイトでもあるドリュー・ワイスマンと出会い、そこでmRNAについて日々論じるようになりました。
彼らはその画期的な発見を10年以上にわたって研究し論文を発表し続け、いくつかの大きな挫折を経て、ついに大手バイオテクノロジー企業の関心を引くことに成功しました。
そして、コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界を襲ったのです。
カリコの人生は、自分のパッションを見つけ、それを毎日欠かさずに追究し続けることがいかに重要であるかの証しです。
自分が何に情熱を注ぎたいかを知ってはいても、セルフモチベーションを日々高められる人は少ないでしょう。
最終的にワクチンが効果を示したとき、「贖罪」を果たしたような気分だったとカリコはデイリー・テレグラフ紙に語りました。
彼女にとっての「違いを生み出す違い」は、彼女のマインドセットであると私たちは強く確信します。
カリコは主張します。
「私は想像力を駆使して、『すべてはここにある、私がよりよい実験をすればよいだけだ』と自分に言い聞かせました。」
まさにそれこそが彼女が実践したことでした。
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NLPトレーナー ミッキー・フェール(Mickey Feher)プロフィール
著者より許可をいただき掲載しています。
https://www.psychologytoday.com/us/blog/on-purpose/202310/the-power-of-mindset
Psychology Today © 2024 Sussex Publishers, LLC
参考文献
ロバート・ディルツ、ミッキー・フェール『The Power of Mindset Change- Why Mindset Matters Most(マインドセットを変える力:なぜマインドセットが最も重要なのか)』(2023)【未邦訳】
ロバート・ディルツ『Success Factor Modeling Vol.I:Next Generation Entrepreneurs - Live Your Dream and Make a Better World Through Your Business(サクセス・ファクター・モデリング第1巻―次世代起業家―夢に生き、ビジネスを通じてより良い世界を作る)』(2015)【未邦訳】
キャロル・ドゥエック『Mindset: Changing the way you think to fulfill your potential(マインドセット:自分の可能性を最大限に引き出すために考え方を変える)』(2017年)【未邦訳】
ミッキー・フェール「Mindset: Your Leash or Your Wings(マインドセット:あなたの鎖か翼か)」(2021)、フォーブス誌掲載【未邦訳】
ミッキー・フェール 「The Intrapreneur Mindset: Why organizations should pay more attention to mindset(イントラプレナー・マインドセット:組織がマインドセットにもっと注意を払うべき理由)」(2022)、サイコロジー・トゥデイ掲載【未邦訳】
ミッキー・フェール「The War for Your Attention: Are you in charge of your mind?(あなたの関心をめぐる戦い:あなたはあなたの精神が管理できていますか?)」(2022)、サイコロジー・トゥデイ掲載【未邦訳】
カタリン・カリコ博士(2022) 2021年4月28日、ハノイで開催されたヴィンフューチャー財団のヴィンフューチャー大賞におけるカリコ博士の受賞スピーチより引用
ジュリア・コレウェ「Covid vaccine technology pioneer: 'I never doubted it would work'(ワクチン技術の先駆者「うまくいくと信じて疑わなかった」)」(2020)、ザ・ガーディアン誌掲載【未邦訳】
イアン・サンプル「Scientists' egos are key barrier to progress, says Covid vaccine pioneer(科学者のエゴが進歩の主要な障壁であるとCOVIDワクチンの先駆者が語る)」(2021)、ガーディアン誌掲載【未邦訳】