著:ミッキー・フェール
私はある企業の経営幹部たちとミーティングをしていました。
組織におけるリーダーとしての彼らの役割について話し合い、率先して行動し、
ポジティブ・シンキングを自らが実演することでチームに模範を示すことについて話し合うのが目的です。
彼らの関心はすぐに経営陣に向けられました。
「我々には積極性を求めながら、彼ら自身は決して率直にコミュニケーションを取ろうとしない!」という意見が聞こえてきます。
そう、彼らは経営陣が発しているメッセージの信憑性に疑問を抱いているのです。
確かに彼らの意見は正しいのかもしれません。皆さんもこうした状況に心当たりはありませんか?
大半の人は、信憑性と考えたときにまず思い浮かぶのが「一貫性」ではないでしょうか。
私にとって一貫性とは、安定した価値観と道徳観を持って、一貫した姿勢でゴールを追い求める、カリスマ性のある人物というイメージです。
先ほどの経営幹部たちの話は、まさにこの点を如実に語っています。
リーダーの一貫性が疑われたり、行動が言行不一致だと思われてしまったりすると、人々は自社のビジネスイニシアティブの信憑性を疑うようになるでしょう。
一貫性があることは素晴らしいことです。
しかし、21世紀を生きるリーダーたちは外部環境の極めて不安定な性質も受け入れなければなりません。
常に変化を続ける状況下で効果的にリーダーシップを発揮するには、絶えず進化し、変化し続ける必要があるのです。
変化が避けられない状況でも一貫性を保つにはどうすればよいのでしょうか?
以前、中規模企業のCEOとのコーチング・セッション中でこのような会話がありました。
ミッキー:
「ジョン、あなたはチームに定期的なタウンホールミーティングを約束しましたよね。」
ジョン:
「そうしたミーティングから、彼らがそこまでの恩恵を受けるとは思えないのです。
ああした場では、何かを決めることもできません。
だから、その点について議論をしても、結局は混乱を招くだけでしょう。」
ミッキー:
「それは一貫性のあるリーダーシップではありませんよ。
情報が何も下りてこないこと自体が情報なのです。対話は継続させなければなりません。」
ジョン:
「一貫性なんて、想像力の欠如の表れでしょう。」
私は今でも自分の意見が正しかったと思っています。彼は一貫性を保ち、約束を守るべきでした。
しかし彼は、自分が明確なメッセージを伝えることができないのであれば、混乱を助長するだけだという見解でした。
どちらが正しいかはさておき、このような不安定な時代においては、
同時に複数の真実を維持できることがリーダーシップにおける重要な行動特性となります。
あなたは、「目標さえ明確にすれば、行動も自然と伴ってくる」のような、有意義で論理的で、共感しやすい考え方を好みますか?
あるいは、「自らの選択だ」と思わせながら、自分が望む行動を相手に取らせることができる「モチベーション」という芸術の信奉者ですか?
これらの言葉を聞いたことがありますか?
「後悔するくらいなら安全策を取る」あるいは「リスクを取らなければ何も得られない」
こうした相反する考え方も、状況によって同時に真実となる場合があります。
相反する考え方を同時に持ち、状況に応じてどちらか一方を優先させることは、必ずしも一貫性を欠くことにはなりません。
実際、相反する考え方を持ち合わせていることは、複雑な世の中に対応するために不可欠なのです。
一貫性を求めながらパラドックスも受け入れるという考え方に、私たちは慣れる必要があります。
世界は複雑です。唯一の論理的背景に、考え方や意見、フィードバックを一致させるのは制限的であり、
問題解決の選択肢を不必要に狭め、効率を妨げることになります。
ですから、どんなに真実だと信じていても、それに相反する考え方にも妥当性があるかどうかを自問してみましょう。
本当の真実とは、両方を超越したところにあるのかもしれません。
より良い意思決定のために、複数の真実を同時に受け入るための私のシンプルなレシピをご紹介しましょう。
- 自分の真実をいくつかのキーポイントに要約します。
- 次に、相手の立場に立ちます。彼らの真実は何でしょうか?
- どちらの立場からもディソシエイト(自分を切り離す)します。
- 次に、「森の賢いフクロウ」になって、木の枝にとまりながら2つの異なる真実を傍観していると想像してください。
- 最後に、「コミュニケーションを取らないことは不可能」という逆説も受け入れましょう。
この視点に立っているときに身体で感じることに気づいて記録しておくことで、自分の真実を確認します。
自分の真実や信念と同調しているときに浮かんでくる映像や思考パターンにも気づきます。
前述の例では、CEOになりきって次のように言います。
「ミーティングはしない。共有したい情報はない。私が彼らと話せば、状況は悪化するだけだ」
相手の立場に共感しているときに浮かんでくる感情、映像、思考に気づきましょう。
先ほどのCEOのチームの一員だと想像して次のように言います。
「彼は情報を出さないようにしている。同じチームの一員として扱ってくれていない」
この真実を身体で感じたときに浮かんでくる感情や思考に気づきましょう。
両方の意見に対して、状況とは無関係な第三者的観察者の視点に立ちます。
そして、どちらも真実ではないし、単に1つの意見に過ぎないと想像してみましょう。
これらの意見はどちらも制限的なビリーフであると捉えたとき、自分の思考や感情に何が起こりますか?
どちらも絶対的な真実ではないと感じられますよね?
CEOが話すことで人々が混乱するというのは、必ずしも正しいわけではありません。
人々と話すことは、実際、状況の改善につながります。
チームの意見も正しくありません。
CEOは彼らを蚊帳の外に置きたくて、意図的に情報を制限しているわけではありません。
彼なりのやり方でチームを守ろうとしているのです。
そして、どちらも真実であることに気づきましょう。
どちらも同時に真実であり正しいと認識している感覚に気づきます。
あいまいなメッセージは確かに人を混乱させます。
そして、コミュニケーションを避けることは、同じチームのメンバーとして相手を扱っていないことと同じです。
最初の4つのステップを新たな真実として統合します。何を学びましたか?
最初の4つのステップを体験したことで、他にどのようなことが可能になりましたか?
適切な情報を持っていないことについて、チームとどのように話し合いますか?
著者について
ミッキー・フェール:心理学者であり、シリアルアントレプレナー(連続起業家)でもある。
また、コーチ、ファシリテーターとして、組織や個人が高次の目的を見出す手助けをし、その2つを結びつけることで、より良い結果と精神を生み出すことを支援している。
ミッキー・フェール氏から日本で直接学べる講座はこちら
NLPトレーナー ミッキー・フェール(Mickey Feher)プロフィール
著者より許可をいただき掲載しています。
https://www.psychologytoday.com/us/blog/on-purpose/201911/should-i-say-or-should-i-not
Psychology Today © 2024 Sussex Publishers, LLC