企業の発展・成長のためには
新しい改革や変化を
起こし続けていくことが必要不可欠です。
そのための一つの施策として、
企業が取り入れ始めていることの1つに
シェアドリーダーシップという
スタイルがあります。
この記事では、
シェアドリーダーシップの
言葉の意味から、仕事への良い効果や
活用時の注意点、
最大限に生かすポイントを
普段、学生の皆さんへリーダーシップや
コミュニケーションについて
講師としてお伝えしている筆者より
解説していきます。
目次
1.シェアドリーダーシップとは
1章では、シェアドリーダーシップの意味と、通常のリーダーとの違いは何かをそれぞれ解説していきます。
どのような効果があるのか、実施にあたっての注意点やポイントなどは、後の章でご紹介していきます。
1-1.シェアドリーダーシップの意味
シェアドリーダーシップとは、チームや組織の中のメンバー全員がリーダーシップを発揮していることを意味します。
チームや組織の中で、マネジメントの役割を持つ役職者がいたとしてもその人がそのチームの絶対的なリーダーではないということです。
チームメンバー全員が、自分の得意分野でリーダー(主体性)の姿勢を取り、そのタイミングでのリーダーが適正だと感じたら、
他のメンバーはフォロワーシップ(協力)の姿勢を取ることで、1つのプロジェクトや業務の中でリーダーを交代しながら進めていくことができます。
このシェアドリーダーシップの考え方が浸透したチームは、自走型の組織になりやすい、というメリットがあります。
このシェアドリーダーシップの仕組みについて、具体例を用いて解説します。
1つの商品をPRするプロジェクトとしてチームメンバーが10人いるとしましょう。
商品のPRプロジェクトには、全体の進捗を管理する人を始め、広告を作成する役割や、SNSなどを使った後方の役割も含まれています。
例えば、商品の広告を作成するにあたってのリーダーは、ベテランのAさんが得意だった場合、
Aさんが率先してリーダーを務め、他のメンバーへの指示出しや、業務の管理を行います。
また、実際にできた広告をSNSで発信するにあたり、どの媒体を使うのか、何時に投稿するのか、一文目に何を書くのかは新卒のBさんが得意だった場合、
SNSの部門はBさんがリーダーとして進め、他の人はメンバーとしてフォローに回ります。
このように、メンバーそれぞれの得意分野でリーダーシップを発揮し、
全員がリーダーシップとフォロワーシップを臨機応変に発揮していくことがシェアドリーダーシップの仕組みです。
1-2.従来のリーダーとの違い
通常、「リーダー」と聞くと、私達が想像するのはチーム内で圧倒的なカリスマ性を発揮する1人の人に
メンバーでついていくということが一般的ではないでしょうか。
通常のリーダーとシェアドリーダーシップとの一番の違いは1人だけがリーダーなのか、全員でリーダーを担当するのかということです。
近年は特に、急激なAI化やコロナの影響もあり、世界が目まぐるしく変化しています。
そんな中、従来の1人だけのリーダーが全てを管理し、リーダーシップを発揮することで全てを対処することは難しくなってきているのです。
以下に図を用いて説明します。
通常のリーダーは左のように、1人のリーダーからトップダウンの流れで業務を進めていきます。
対して、シェアドリーダーシップは、それぞれがリーダーとして主体性を発揮するため、
その関係性は年代・性別に関わらずフラットになります。
シェアドリーダーシップでは、年功序列の考え方とは異なるため、実力あるメンバーがチームを率いていく場面も出てきます。
近年、働き方の多様化・改革があることも、企業がシェアドリーダーシップを取り入れることになった要因の1つにあたるでしょう。
2.シェアドリーダーシップの効果4選
シェアドリーダーシップを活用することによる一番の効果として一言でお伝えしますと、「会社の業績アップが見込めるようになる」ということです。
それは一体なぜなのか。その効果性を5つご紹介していきます。
2-1.新しいアイディアが生まれやすくなる
シェアドリーダーシップでは、1章でもお伝えしたように、リーダーシップを1人だけでなく、メンバー全員が発揮していきます。
そのため、新しくリーダーを担当した人によって、それまでは出てこなかったアイディアが新たに生まれることがあります。
企業のベテランのメンバーが、それまでの会社の伝統やいつもの流れを進めていたとしても、詰まってしまうことは起こり得ます。
そこで、新卒社員を採用している企業であれば、新入社員にリーダーの役割を与え、リーダーシップを発揮させることで、
全く新しい視点からの発想をしてくれる可能性があるのです。
2-2.チームメンバーのモチベーションの向上
シェアドリーダーシップでは、全員がリーダーになることができるため、リーダーに抜擢されたというところからモチベーションの向上が見込めます。
2-1でも、新卒社員のによるチームへの貢献についてお伝えしましたが、
裁量権や自身での決定権を持つことができると、自主性が磨かれるため、モチベーションの向上に繋がることでしょう。
ですが、特に若手メンバーがリーダーを担当する時には、もちろん注意すべきこともあります。
それは、3-1で解説していきます。
2-3.生産性の向上
従来のリーダーシップでは、1人がリーダーを務めることで、情報収集や管理はしやすかったかもしれませんが、
そのリーダーの不得意であったり、知識・経験不足とする分野のテーマの業務については、
リーダーがそこにリソースを割く必要が出てくるため、効率が悪くなってしまうことがあるのではないでしょうか。
シェアドリーダーシップリーダーでは、各々の得意分野でリーダーシップを発揮することができるため、
その分野に精通している人がリーダーを担当することができるのです。
何が効率が良くなるか、どうしたら成果が出やすいのか、という知識を備えた人がリーダーとなった場合、
結果として業務全体の生産性の向上に繋がりやすくなります。
2-4.人材育成に良い効果がでやすい
シェアドリーダーシップでは、年代や役職に関わらず、誰でもリーダーシップを発揮することができるため、人材育成の幅が広がるというメリットがあります。
リーダーを担当することによって、責任感や仕事の全容をリーダーとして把握できるようなスキルを培うため、人材育成に良い効果が出やすいでしょう。
また、会社の中での自分の存在意義や居場所が見出されやすくなるため、離職率を下げる効果も見込めるかもしれません。
3.シェアドリーダーシップを実行する時の注意事項
シェアドリーダーシップは、しっかり活用できると企業にとって、良い効果を発揮しますが、実行する際には注意すべき点があります。
大きく分けて2つご紹介しますので、実際に企業内に取り入れる際は、対策を取りながら進めていただくことをおすすめします。
3-1.若手が担当する時はサポート役をつける
メンバー全員がリーダーということは、若手がリーダーを担うことも出てきます。
経験がまだ浅いメンバーでリーダーを担当すると、仕事そのものの回し方や、
目上のメンバーとのやり取りで、不安になる部分が出てくることもあるでしょう。
そのため、最初のうちは若手のリーダーをサポートできるよう担当をつけることをおすすめします。
例えば、目上の方へ何かをお願いするときには、同行して依頼の伝え方をサポートができるでしょう。
また、進めるべき項目でスケジュール管理ができているか、様子を一緒に見る時間を設けることもできます。
困ったことがあったときの相談役として良いポジションが取れる人がいることによって、
プロジェクトの進行が遅れることを防いだり、より高い成果を上げることに繋がります。
3-2.チームワーク次第では逆効果となる可能性がある
リーダーを全員が担当するということは、誰か一人がリーダーを担当するよりも、チームメンバー同士の連携力が大事なポイントになります。
なぜかというと、もしチームワークが悪いチームでシェアドリーダーシップを行ってしまうと、以下のような意見が出るかもしれないからです。
あの人がリーダーの時は仕事がやりづらい」
あの人があまり好きではないからメンバーとしての仕事に取り組みたくない」
メンバーを信頼してないから仕事が振りにくい」
上記のように、コミュニケーションがうまく取りづらい環境では、仕事の成果も上がりづらいのです。
人同士で仕事をしていく以上、タイプが違っていたり、価値観が合わないことももちろんあるので、
時間はかかってしまうかもしれませんが、チームワークを良くするための施策として取り組むことが重要です。
4.シェアドリーダーシップを上手く活用するポイント6選
シェアドリーダーシップのメリットや注意事項をご覧頂いたうえで、ここからは、実際に活用するためのポイントを6つご紹介します。
4-1.目標をメンバーにしっかり共有する
シェアドリーダーシップでは、状況に応じてリーダーが変わっていくため、目標や目指す先がそれぞれのリーダーによって変わる場合も有り得るでしょう。
そのため、そのリーダーが目指しているゴールや目標を、メンバーにしっかり共有することが大切なのです。
こまめにミーティングで目標を共有したり、グループメンバーにメールやチャットなどで一斉に配信するなど、
目指す先を全員で向かっていける仕組みを整えて実行することで、目標が共有されている状態を作り出すことができるでしょう。
4-2.PDCAサイクルを回す
PDCAサイクルは、既にご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、以下の4つの行動のサイクルを回して、業務改善を目的とする仕事の進め方の1つです。
- P:Plan(計画)
- D:Do(実行)
- C:Check(測定・評価)
- A:Action(対策・改善)
これらを活用することにより、誰がリーダーを担当したとしても、
それぞれ計画を立てて実行し、結果に対する評価から、次回への改善までの手順を必ず踏むことができるようになります。
そのため、やるべき業務が漏れてしまうことや、質が低いままになってしまうことなく、一定の基準値を保った仕事の進め方が可能になるのです。
4-3.OODAループを活用する
OODAループは、PDCAサイクルより更に早く物事を進めて、改善して行動していく業務の進め方の手順です。
以下の4つのプロセスを経て、迅速に課題を解決することが可能になります。
- O:Observe(観察)
- O:Orient(状況判断、方向づけ)
- D:Decide(意思決定)
- A:Act(行動)
これを活用することで、目の前の課題に対して、何度も仮説を立てて、
その上で、選択肢を考えることができるため、PDCAより、早く課題解決に進めやすくなる効果が見込めるでしょう。
4-4.メンバー間でのコミュニケーションを大切にする
3章でもご紹介したように、シェアドリーダーシップを活用するためには、メンバー間の連携が取れていることや、チームワークの良さが必要不可欠です。
そのために、コミュニケーションを大切にすることが必要になります。
これは、仕事の成果をあげることを目的とした時に、意外と見落としがちなのですが、特に重要なポイントですので、しっかり把握しておくことをおすすめします。
メンバー間のコミュニケーションをより良くするためには、信頼関係を構築する必要があるのですが、
そのための手法として、今回は、二つのアプローチをご紹介します。
4-4-1.相互に「自己重要感」を上げていく
自己重要感というのは、自分が自分自身で価値のある存在と思うことができていること。
または他者から認められている、必要とされている、価値のある存在と思ってもらえてると実感できていることによって得られるものです。
この自己重要感を互いに満たしあっていくことで、その間には信頼関係が構築されやすくなります。
そのため、信頼関係を構築してチームワーク力をあげるためには、チームメンバー同士が自己重要感を互いに上げられる環境作りが大切なのです。
日頃のコミュニケーションの中で以下のようなやりとりを、意識的に多く取り入れることで相手の自己重要感を満たすことに繋がります。
褒める | すごいですね、良いですね |
認める | 助かります、〇〇さんのおかげで〜 |
ねぎらう | お疲れ様です、いつも頑張ってますね |
励ます | 大丈夫ですよ、頑張ってください |
感謝 | ありがとうございます |
非常にシンプルな内容ですが、その効果は絶大です。
また、上記でご紹介したことを大切にしている企業の中には、
感謝やねぎらいの言葉を送り合う習慣をつけるために「サンクスカード」という制度を活用していることもあります。
この制度を活用して、日頃から直接なかなかお礼を伝えられないメンバーへも、
カードにお礼や労いの言葉を書いて渡し合うことによって、社内のコミュニケーションの活性化を図ることができます。
4-4-2.「傾聴」で信頼関係をさらに深める
また、コミュニケーション力は、伝えるだけでなく、話を聞く側でも意識できることがあります。
人の話を聞くことは、仕事でも日常生活でも、ごく当たり前に行なっていることだと思います。
実は、相手の自己重要感を上げるためには、話の聞き方にも大切なポイントがあります。
話を聞く力を「傾聴力」とも言ったりしますが、実は、リーダーに求められるスキルの1つでもあるのです。
そして、このスキルは今からでも少し意識するだけで鍛えることが可能です。
傾聴力を上げるためのポイントを下記にご紹介します。
アイコンタクト |
作業中であれば手を止めて、適度に目を合わせながら話を聞くことによって、 話し手は「話を聞いてくれている」実感があり、自己重要感が高まる効果がある |
うなずき |
話を聞きながら、時折うなずきを入れることによって話し手は 「相手が賛同してくれている」「自分の話している内容は間違っていなさそう」と安心しながら話すことができるようになる。 |
あいづち |
バリエーションを多く持っておくと、話し手が聞いてもらえている実感が湧きやすい。 例)はい、ええ、そうなんですね、すごいですね、、など 同じ言葉を繰り返し過ぎてしまうと、適当に聞いていると話し手に思わせてしまう恐れあり。 |
■今日からすぐに意識できるポイント
上記でご紹介したポイントはすでに実行されている方も多くいらっしゃると思います。
聞き手側になった時に、意識して上記をより実践していくことで、話し手が「話を聞いてもらえている」という感覚になり、自己重要感を高められる効果があります。
■さらに傾聴力を上げるためのポイント
さらに、傾聴力を上げたい方は、ラポールスキルを身につけることをお勧めします。
ラポールとは、信頼関係と言い換えることができ、心理学NLPで活用されるスキルです。
具体的なスキルとして今回は3つご紹介します。
ミラーリング | 話し手と姿勢や表情などを合わせていく |
マッチング | 話し手の声のトーンや大きさに自分も合わせていく |
バックトラッキング | 話し手が話した言葉を繰り返して返答する |
このラポールスキルの目的は「相手と似た状態を作る」ことで「親近感」が湧きやすくなることです。
そのため、聞き手側が話し手に姿勢、声のトーン、言葉を合わせていくことによって、
話し手が「わかってくれてる」という感覚を得やすくなるのです。
このように、コミュニケーション能力やラポールスキルを身につけ、組織をさらに活性化させたいとお考えの方は、下記の内容もお役に立つと思います。
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4-5.メンバー全員がリーダーに必要なスキルを理解して実行する
リーダーを担当するにあたって、リーダーに必要なスキルがあります。
目標達成力、問題解決力、統率力、決断力、コミュニケーション力、などの必要なスキルを上げると多くの能力を求められます。
リーダーを担当するチームメンバー全員が、リーダーとして必要なスキルは何か、何をすべきなのかを理解して実行する必要があるのです。
そのためには、もちろんリーダーとしての経験を積むことが大切なのですが、前準備としてできることもご紹介しておきます。
例えば、リーダー経験が豊富なメンバーから経験の浅いメンバーに対して、
実践形式の研修を通してリーダースキルを身につける機会を提供することで、リーダーが何をすべきなのかの理解を深めることができます。
4-6.メンバー全員がフォロワーシップを理解して実行する
フォロワーシップというのは、メンバーがそのチームに所属するうえで、リーダーやそのチーム・組織のために、
自分から主体的に動くことができてる状態のことを指します。
リーダーが臨機応変に変わっていく中で、リーダーの統率力などももちろん大切です。
そして、シェアドリーダーシップの効果を最大限にするためには、リーダーシップと同じくらい、
メンバーによるフォロワーシップがあることが求められます。
フォロワーシップを向上させていくためには、メンバーによって以下のことができていることが理想的です。
- 仕事を自ら巻き取って実行することができる
- 自身の考えを発言することができる
- リーダーの意思を汲み取って行動できる
- メンバーとのコミュニケーションを円滑に取ることができる
- 報連相をしっかりすることができる
シェアドリーダーシップをうまく活用するためには、もちろんリーダーの力が大前提として大切なのですが、
実は、メンバーのフォロワーシップがないと成り立たないのです。
最後に
近年、コロナの影響やAI化が進む中で、時代の変化や働き方の多様化など変革が大きく、そして早く感じられます。
この急速に変化していく環境の中でビジネスを成り立たせて、企業を大きく成長させていくためには、
従来のように一人のカリスマ的なリーダーだけが、組織を統率する以外の手法も柔軟に取り入れていくことが欠かせなくなるかもしれません。
ぜひ、組織の成長のためにもシェアドリーダーシップを小さな業務からでも取り入れてみることをお勧めします。