折衝力(せっしょうりょく)。
商談など、ビジネスの現場で
聞いたことがある方も
いらっしゃるのではないでしょうか。
折衝力を鍛えていけば、
どんな相手とも話の着地点を見つけ、
実のある話し合いを行うことが
可能になります。
そして、折衝力が高くなればなるほど
よりレベルの高い商談や
規模の大きい交渉を
任されるようになるに違いありません。
折衝力を高めるためには、
人の心理を理解し、
活用することが有効です。
本記事では、折衝とは何かを押さえ、
折衝力が高い人の特徴や
どうすれば折衝を
成功させることができるのかを
心理学を取り入れて解説します。
目次
1.折衝力とは?
これまで「折衝力」という言葉にあまり聞き馴染みの無かった方にとっては、「どういう意味?」「交渉と何が違うの?」という疑問が湧いてくるでしょう。
折衝力とは、一言でお伝えしますと「利害関係が一致していない相手と話し合い、折り合いをつける能力」のことです。
企業や国家といった、組織間のやりとりで用いられます。
折衝力の中身をお伝えする前に、まずは、「折衝」の語源や、似た言葉との違いを知ることで「折衝力」という言葉そのものの意味について理解を深めていきましょう。
1-1.折衝の語源は故事成語?
「折」と「衝」の漢字には話し合いや交渉のような意味がなく、どうしてこのような意味になったのか疑問に思った方もいらっしゃると思います。
ここでは、ちょっとした雑学的に折衝の語源にまつわるエピソードをご紹介します。
「折衝」という言葉を漢字の意味だけで捉えると、「衝(つ)」いてくる相手の矛先を「折(くじ)」くことを指しています。
この「折衝」が交渉のような意味をもつ理由は、中国の古い書物『晏子春秋(あんししゅんじゅう)』に書かれたエピソードにあります。
晏子(あんし)とは、中国春秋時代の斉(せい)の国で政治を取り仕切る宰相(さいしょう)という役職を担っていた人物です。
『晏子春秋』に記されているエピソードによると、中国春秋時代に、晋の君主である平公は、斉を攻めるために范昭(ハンショウ)に斉の様子を窺わせました。
その際、晏子は范昭を宴会の席へ招きます。
范昭は宴席で非礼な言動をとり、挑発していたところ、晏子は巧みな振る舞いにより、
一切の武力をかざすことなく、范昭を丸め込み、晋に斉を攻めることを諦めさせたのです。
このように、晏子が宴会の席で武力を行使せずして、話し合いのみで「衝(つ)」いてくる相手の矛先を「折(くじ)」いた、というエピソードから、
「折衝」という言葉が話し合いの意味合いで使用されているのです。
1-2.似た言葉との違い
折衝という言葉は、交渉などの似た表現とよく混同されがちですが、その違いがイマイチわからない・・・という方がほとんどだと思います。
本記事では最も混同されやすい「交渉」に加えて、「談判」「駆け引き」の合計3語との違いや共通点を解説しながら、折衝という言葉の意味を改めて考えましょう。
・交渉
交渉とは、「ある事柄を取り決めようとして、相手と話し合う」ことです。
お互いの利害関係を調整して、双方にとって納得でき、利益を最大化できるゴールを探ることに焦点を当てた言葉です。
一方で、折衝では、そもそも「利害関係が一致していない」という前提を含んでいます。
お互いの利害関係が合わない中で折り合いをつけるので、利益を求めるよりは、話し合いの着地点となる「妥協点」を探る意味合いになります。
交渉のシチュエーションに比べると場面が限定されているため、交渉の中に折衝が含まれるイメージです。
・談判
談判とは、「もめごとに決着をつけるために相手方と話し合うこと」を表します。
両者の利害関係が相反することが折衝と似たポイントですが、主に個人間で用いられる言葉という点が異なります。
折衝は、組織と組織の間での話し合いに用いられる表現です。
・駆け引き
駆け引きとは、「相手の出方や状況に応じて自分が有利になるように処置すること」を意味します。
こちらは、恋愛や勝負事で使われることの多い言葉で、折衝と大きく異なる点は「自分が有利になるように」という点です。
折衝では、自分が有利になることではなく、自分と相手側の間で折り合いをつけることが目的となります。
以上の内容をまとめると、折衝は交渉や談判、駆け引きと一部似た意味を持っていますが、
折衝を使用する場面の特徴として
- 【1】利害関係が一致しない、
- 【2】組織間のやり取りで、
- 【3】お互いの妥協点を探る
という点があります。
「折衝力」を考える前に、折衝とはどのようなものなのか、理解を深めていただけたでしょうか。
意見や利害関係が似ている場合には相手の考えを見つけやすく、すんなり折衝が進みますが、
利害関係が一致していない場合は相手の思惑を探ることにコツが必要でしょう。
また、組織間でのやり取りのため、個人で話し合いを進めること以上に、お互い慎重な姿勢になることが多いです。
このような状況で、折衝を成功させるには人の心理を理解すること、そして相手にあわせて自分のコミュニケーションの戦略を変えることが重要になります。
次の章では、そのような人の心理を読んで活用できる折衝力が高い人の特徴について考えてみます。
2.折衝力が高い人の特徴
ここまで、「折衝」という言葉について理解を深めてきました。
折衝が上手に進められるための能力が「折衝力」にあたりますが、その折衝力とは一体どのような能力なのでしょうか。
折衝力が高い人の特徴をみていきましょう。
2-1.相手の立場にたって考えることができる
まず、折衝力がある人は、自分の視点だけでなく、相手の立場にたって考えることができます。
これから話し合いをする相手が置かれている状況や、主張の理由などの背景情報を推測しながら、話を進めることができます。
相手のことを考えられると、自分の立場との違いや主張の一致する部分・異なる部分がわかるようになり、妥協点を見つけやすくなります。
このように、自分の視点から外れて違う人の立場にたつことを、心理学NLPでは「ポジションチェンジ」と呼びます。
このポジションチェンジは折衝力の高い人の中でも特に重要な能力といえるでしょう。
ポジションチェンジについて、詳しくはこちら
↓
ポジション・チェンジとは?「仕事や人間関係」の悩みを解決する手法
2-2.客観的な視点を持てる
折衝力がある人は、相手の視点に加えて、客観的な視点を持っています。
進めている話し合いが、第三者の視点から見てどう着地するのがベストかを想定しながら、目の前の相手と話すことができるため、
自分と相手にとって折り合いがつくだけでなく、第三者から見ても納得感があり認められる結果へ繋げられるようになります。
2-3.代替案を提示できる
折衝の場では、相手との妥協点を見つけることがゴールです。
そのためには、自分の主張・相手の主張とは異なる提案を行う必要がある場合もあります。
ここで折衝力がある人は、相手の主張と自分の主張の一致する点を探り、その情報をもとにお互いにとってベターな代替案を提案し、話をまとめることができます。
代替案を出すプロセスの一つに、相手の主張と自分の主張の一致する点を探ることがありますが、この時は、ただ両者の主張を見比べるのではなく、
それぞれを抽象化したり、「それはつまり...」とより高次な目的で一致する点を発見することを行っています。
2-4.自分の主張・要求をわかりやすく伝えられる
折衝力がある人は、説明が上手な傾向にあります。
折衝の場では自分の主張を角が立たないように、かつわかりやすく相手に伝えることができると、
相手の主張と一致する点や違いを明確に把握することが可能になります。
そうすると、妥協点を探しやすくなります。
ここまでの特徴を持つ人は、折衝力が高く折衝の場で結果を残すことができたり、対立する意見をまとめて妥協点を探すことができる人たちです。
次の章では、折衝力が高い人の特徴を踏まえて、どのようにすれば折衝力を高め、折衝を成功させることができるのかをご紹介します。
3.折衝を成功させる5つのポイント
折衝力が高い人たちは、日頃から折衝の上手い人から技を盗んだり、自分から勉強することで、その折衝力を手に入れ、発揮しています。
ここでは、折衝力が高い人たちが共通して行っている折衝を成功させるポイントを解説します。
3-1.相手の話を傾聴する
折衝力の基本になる力は傾聴力です。
なぜならば、折衝を成功させるには、相手の主張を正確に把握することが最重要だからです。
折衝の場では自分の主張をまず言いたくなってしまいますが、ここをこらえて、まずは相手が何を求めているのかを傾聴することをまず第一に、徹底して行っています。
そして、時折重要なポイントを要約して聞き返したり、相槌を打つことで、相手に話を聞いてもらえているという印象を残すことができます。
そして、3-2.でお伝えする内容と組み合わせることで、相手から信頼を得ることができ、自分の主張を受け入れてもらいやすくなります。
その結果、自分が話をコントロールし、折衝を成功させることにつながるのです。
3-2.相手にあわせた話し方をする
折衝力の高い人たちは、相手の立場に立って考えることができ、客観的な視点を持っていることをご紹介しました。
折衝力が高い人は、それに加えて話すスピードや使う言葉を合わせるといった、相手に話し方を合わせるということも同時に行っています。
その理由は、親近感や信頼感を抱いてもらいやすくなるからです。
人間には、自分と似たものに対して親近感を抱く性質があります(類似性の法則と呼ばれています)。
この、類似性を意図的に生み出す方法の一つが、相手に話し方を合わせることなのです。
この相手に話し方をあわせるスキルを実践心理学NLPでは信頼関係を構築する「ラポールスキル」と呼んでいて、
コミュニケーションにおいて最も重要な要素として教えられています。
そして、ラポールスキルを駆使して親近感や信頼感を交渉相手に与えることができれば、
自分の求めている方向に話を進めるときにこちらの主張が受け入れてもらいやすくなる、という効果を発揮します。
このように、人の心理を活用し、相手と話し方を合わせることでより相手に親近感・信頼感を抱いてもらいやすくなり折衝の成功率がぐんと上がります。
ラポールについて詳しくはこちら
↓
ラポールとは?押さえておきたい基本スキルを心理のプロが徹底解説
3-3.代替案を事前に考えておく
折衝を成功させるコツとして、代替案を見つけて提案することがあります。
自分の主張と相手の主張が対立しているため、どちらかの主張に合わせることは困難で、その主張をすりあわせて、妥協する必要があるからです。
代替案はその場で見つけることが難しい場合が多いため、事前に考えておくことがいいでしょう。
事前に複数個の代替案を用意しておくことで話し合いの場でスマートに提案することが可能になります。
代替案を考えるときには、相手の立場に立ってどのような主張で、何が満たされれば納得してもらえるかを想像すると、いいアイデアが浮かびやすくなります。
3-4.共通の目的や意図を見つけ、詳細を話す
折衝の場では相手と自分の主張をすり合わせて、妥協点をみつけることがゴールです。
この妥協点を探るために効果的な方法が、共通の目的や意図を見つけて、それから詳細を話すことです。
共通の目的や意図とは、それぞれの主張よりも抽象的で大きな概念で、お互いの価値観を反映したものです。
例えば、「A案を実行すること」と「B案を実行すること」で対立している場合でも、その主張の目的を探り、言葉の抽象度を上げていけば
「お客様満足度を上げる」「売上アップにつなげる」といったお互いに共通している目的を導き出すことができます。
このような高次の部分で共通した目的を見つけることができると、この目的を達成するためにどうすればいいか、という詳細を共通認識を持って考えることができ、
結果として話した内容が妥協点となります。
共通の目的や意図を見つけてから詳細を話す手順を取ると、互いに抵抗感なく妥協点を探ることができ、折衝の成功率が上がります。
3-5.折衝力がある上司や先輩をコピーする
折衝を成功させるために最も早道となる方法は、折衝力がある身近な上司や先輩を真似する方法です。
なぜならば、折衝力がある人と同じ行動をし、同じ本を読んだり、同じ言葉を使っていると
そのひとの考えていることや折衝の進め方がわかるようになるからです。
このとき、モデルとなる人を完全コピーするように、徹底的に真似することが重要です。
このような手法を実践心理学NLPでは「モデリング」と呼んでいて、
成果を出すことや、自分の目標に到達するために効果的な手法の一つとして紹介されています。
モデリングについて詳しくはこちら
↓
仕事や人生を一気に次のステージに高めるNLPのモデリングとは
以上、折衝を成功させるポイントを5つご紹介しました。
このようなポイントを抑え、折衝の経験を積んでいくことで、自分の折衝力を高めていきましょう。
4.最後に
本記事では、折衝力についてご紹介しました。
「折衝力」という言葉を初めて聞いた方でも、どのようなものか、どうすれば折衝力がつくのか、参考にしていただけたのではないでしょうか。
そして、折衝力を高める方法としてご紹介した内容のほとんどに実は心理学の要素が含まれています。
この記事では、心理学NLPの要素を取り入れてご紹介させていただきました。
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