著:アンドリュー・T・オースティン
「MoM
(メタファー・オブ・ムーブメント)」とは、
メタファーを通じて
人の深層心理を分析し、
本人さえ気づいていない
心理状態を読み解くメソッドです。
そのため、
『悩みの"本質"を見抜いてしまう術』
このようにも言われています。
普段、人が何気なく使っている
メタファーに隠された
意味を理解することで、
自分や他人の本質や抱えている
問題を見抜き、
深い気づきを得ることができます。
自己や他者理解に役立ち、
特にコーチやセラピストなど、
人の成長と問題解決を
支援する方にとって
強力な武器となります。
MoMでは数十種類に分類された
メタファーそれぞれが、
その人が直面している問題の状態を
明確に表していると考えます。
あなたもMoMを学び、
様々なメタファーを知れば
深層心理のディープな世界に、
どっぷりとハマるかもしれません。
MoM事例:浸しのメタファー「結婚の危機」
可哀想なこの女性。
夫の軽率な行動が明るみに出てしまったために、彼女の結婚生活に深刻な危機が訪れてしまいました。
彼女は涙を流しながら「溺れてしまいそうな気分です」と言いました。
そこで私は、もう少し詳しく聞いてみることにしました。
「正確には、何に溺れてしまいそうなのですか?」
幸運なことに、それは見渡す限り四方八方に広がる単なる海水でした。
中にはそのような幸運に恵まれない人もいます。
人は多種多様なものに溺れてしまうことができます。
例えば糖蜜とかシロップ(「甘美だけどネバネバした状況」「完全に足を取られる」)、下水や排泄物(「糞みたいな状況」)などもかなり一般的です。
一般的に浸しのメタファーは、回避したり逃避したりすることができない、現実世界での継続的な体験を映し出しています。
願わくはあまり大きな痛手を負うことなく通り抜けていく以外に、選択肢のない状況です。
この女性の場合は、見渡す限り四方八方に広がる海でした。
どこにも陸は見えません。けれど彼女は一人ではありませんでした。
「家族が何とか沈まないように頑張っています」と言いながら、彼女は両手でジャグリングをしているようなジェスチャーをして見せました。
比喩的に言えば、それぞれの手には子供が一人ずつ乗っていて、彼らが波にのまれないように何とか頑張っているのだと彼女は言いました。
このメタファーの中に、夫はいませんでした。
この情報だけで、彼女の状況に関する多くの事を推察し始めることができます。
例えば:
- 彼女は放り出された、見捨てられたと感じている
- 彼女は支えを失っている
- 彼女は立ち直る力を失っている
- 彼女は地に足が付いていない
- 彼女は完全に途方にくれている
- 彼女は沈んでいきそうなリスクを負っている
- 彼女は、あっぷあっぷの状態である
- 彼女は漂っている、流れに乗っている?
最後の1つを言った時、彼女に反応が起こりました。
「違う、違います!私は流れに逆らおうとしているんです!!」と彼女は言いました。
さらに多くの情報を得ることができました。
彼女にこのように聞くことができます。
「あなたはどこに行き着こうとしているのですか?」
答えはかなり明確です。
その出来事が突然彼女の足元をすくい、どこかに向かっていたはずの人生のコントロールがすべて失われる前に、彼女は戻ろうとしているのです。
今のような状況に陥るまで、彼女は喜んで流れに身を任せ、すべてと共に流されていきたいと思っていました。
手遅れになるまで、どこに流されていくのかに注意を払っていなかった彼女は、
知らないうちに、馴染んできた全てから切り離された状況に流されていて、途方にくれています。
そして今まさに、嵐が発生しそうな気配が漂っています。
潮の流れに逆らって泳ぎ、元いた場所に戻ろうとすることはとてつもなく大変なことであり、成功する見込みも低いでしょう。
特に、家族が沈んでしまわないようにもがいているのであれば、さらに可能性は低くなります。
最終的に彼女は溺れてしまうか、意図していなかったどこかにたどり着く結果となるでしょう。
岩場に打ち上げられ、見捨てられた状態になるでしょう。
もしかしたら楽園へとすくい上げられることを期待していたのかもしれませんが、楽園はすでに失われています。
鋭い観察眼を持つ人には、この状況には手軽で簡単な救済策はないように見えるでしょう。
そう見えるのは、その通りだからです。
スイッシュ・パターンや6ステップ・リフレーミングは、ここではあまり役に立ちません。
彼女が試そうとしている今の解決策は、もともとこのような状況を作り出したすべてを逆転させるという方法です。
しかしその方法は、生産的ではないことが証明されるでしょう。
これこそが間違いだらけの「真逆の法則」です。
問題があるなら、その逆が解決策だとするのが真逆の法則です。
この法則は間違っているのです。
そこで、私は彼女にたずねました。
「水はどのくらいの深さですか?」
彼女は突然泣き止み、足元を見下ろして顔を赤らめました。
今まで考えた事がなかったのです。
そういう事は、今までもたくさんありました。
彼女が泳ごうともがいていた潮流は、ヒザまでの深さしかなかったのです。
つまり、パラダイム・シフトが起こりえるということです。
- 彼女は立場を明確にしなければならない
- 彼女は自立できる
- 彼女は異なる支えを見つけ、残っている数少ない何かに足をつけることができる
- 自分が進むべき歩みを自分で決めることができる
- 子供たちも自分の足で自立することが許されている
この体験が、人間関係に対する彼女の体験を激変させました(この夫婦は、あれから6年が経った今でも一緒にいます)。
以前、足元を急にすくわれたものの、彼女は喜んで流れに身を任せ、その状況に完全に巻き込まれていました。
しかしその流れの中に、すでに夫の姿はなくなっていたことに彼女は気付いていませんでした。
彼女は長い間、気楽に漂い続けていたのですが、夫がもう一緒にはいないという事実に注意を向けようとしませんでした。
彼はすでに別の場所で、別の誰かと一緒にいたのです。
このような受け身で"漂う"だけの役割は、周囲の大部分の人々との関係に共通していたことに彼女は気付きました。
そしてその全ての関係性が、比較的浅くて、本当の意味での深さに欠けていたことにも気付きました。
しかし、簡単に手に入れられる変化はここにはありません。
彼女が再び乾いた陸地にたどり着くためには、相当なものをかき分けて行く必要があります。
アンドリュー・T・オースティン氏から日本で直接学べる講座はこちら
NLPトレーナー アンドリュー・T・オースティン (Andrew T.Austin) プロフィール
著者より許可をいただき掲載しています。
(C)2024 Andrew T. Austin