著:クリス・ハルボム
私たちが自分について語る最も大切なストーリーは、
自分が自分に語っているストーリーである」- ジム・レアー、Ed.D.
あなたは毎日、人生で体験していることを自分自身にストーリーとして語っています。
外の世界で見ているものについて、内面でどう感じているのかについて、
常に言葉の流れがひそひそとあなたの中で続いているのです。
これらのストーリーは、あなたの思考を導き、感情を導き、あなた自身に対する認識を導き、あなたの人生で何が可能なのかを導きます。
キャリアにおけるあなたの成功の程度や、周囲の人々との関係性にも、これらのストーリーが影響を与えています。
夫のティムと私には、辛い離婚を経験した友人がいます。
彼には16歳の息子がいたのですが、息子は父親と話をしなくなりました。
当時、息子は母親と一緒に暮らしていたのですが、母親と別れたことに腹を立てて、父親と口をきかなくなってしまったのです。
このことで打ちのめされていた友人は、常にこう言っていました。
息子が口をきいてくれない。母親と別れた私を憎んでいるんだ。」
これが、何度も何度も繰り返し、彼が頭の中で自分に語っていたストーリーでした。
離婚してからの数年間、私たちに会うたびに彼は必ずそのストーリーを私たちにも語っていました。
ある日、この友人に電話をすると、彼は息子(その頃には19歳になっていました)と一緒に車に乗っていて、
特別なお祝いの食事に出かけるところなので今は話せないと言うのです。
明らかに息子は父親と再び口をきくようになり、二人の関係は元通りになったらしいことがわかりました。
その後、この友人に会った時、どうやって息子と再び話すようになったのかと尋ねると、彼はこう答えました。
「彼について自分の中で語っていたストーリーを変えたんだよ」
目次
無意識のストーリーとは?
無意識のストーリーとは、人生で起こることについてあなたが作り上げる内なるナレーションです。
日々の生活の中で体験していることにラベルをつける(体験をカテゴリに分け、整理する)ための、無意識の方法なのです。
たとえば、私のコーチングのクライアントは人生に絶望しており、自分の将来が見えないと感じていました。
あるコーチングセッションで彼が私に言ったのは、毎回、仕事に行くたびに、
「こんな仕事嫌いだ、こんな仕事嫌いだ、こんな仕事嫌いだ」と自分で自分に言っているということでした。
彼がいつも惨めな気持ちだったのも無理はありません。
彼は朝から晩まで、自分にそう言い続け、そのことに気づいてもいませんでした。
彼は、自分の仕事が嫌いだと、さりげなく私に漏らしただけでした。
彼の絶望の謎を解く鍵がそこにあるような言い方ではありませんでした。
このようなネガティブなストーリーを自分に語っていたことに気づいた彼は、そのストーリーを
「私は好きな仕事をするのにふさわしい人間であり、好きな仕事で高い給料をもらっている!」というものに変えました。
それから間もなくして彼は仕事を辞め、以前の仕事とはまったく違う新しいキャリアをスタートさせました。そして彼の絶望は完全に消えていきました。
無意識のストーリーに関わるもうひとつの興味深い側面は、
この世界において自分はどのような存在なのか、人生で何が達成可能なのかというビリーフが、無意識のストーリーには埋め込まれているかもしれないという点です。
そうしたストーリーの中には、非常にポジティブなものもあれば、逆にとてつもなくネガティブなものもあります。
もう何年も前のことになりますが、私の同僚の女性は、「自分はいつか癌になって死ぬ」と繰り返し自分に語っていました。
実際に癌と診断された時のために、対処法が書かれた記事まで集めていました。
悲しいことに、彼女は卵巣癌のステージ4と診断され、52歳で亡くなりました。
彼女は自分の健康状態に関する無意識のストーリーを持っていただけでなく、
自分は早死にするというビリーフまで作り上げ、そのビリーフが自己実現的な予言となってしまいました。
このように、あなたの無意識のストーリーは、あなたの健康、人間関係、キャリア、アイデンティティなど、人生のあらゆる領域に影響を及ぼす可能性があるのです。
ネガティブな無意識のストーリーを特定する方法
無意識のストーリーを特定するひとつの方法は、自分の独り言や内部対話など、1日を通して何度も自分に語りかけている内容に気づき始めることです。
そして、繰り返し自分に語っているネガティブな内容に気づいたら、それを書き留めておきます。
興味深いことに、多くの人は自分が常に自分と会話をしていることに気づいていません。
さらには、こうした無意識の対話が日々の体験や自分に対する認識、人生に対する全般的な感情を動かしていることにも気づいていません。
仕事を嫌っていた、私の男性クライアントのように。
ネガティブな無意識のストーリーを特定するもうひとつの方法は、
あなたがずっと不満に思っている日常的な状況や、全般的に快く思っていない何かについて考えてみることです。
通常、この種のストーリーは継続的な性質を持っており、それについて考えるのをやめることができません。
息子に口をきいてもらえなくなった父親の話が、その良い例でしょう。
ネガティブな無意識のストーリーを特定するための5つの質問
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あなたを悩ませている現在進行中の問題や状況について考え、それについてあなたが自分に語っていることに気づきましょう。
あなたのストーリーは何ですか?
- その問題について考えるとき、どのような言葉や言い回しを繰り返し使っていますか?
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そのストーリーを自分に語ることで、自分にどのような影響がありますか?
そして感情的にどう影響しますか?
- そのストーリーをどのような短い文章にまとめられますか?
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そのストーリーの肯定的な目的は何ですか?
そのストーリーを自分に語ることで、あなたは何を得ていますか?
すべての無意識のストーリーには、肯定的な目的が隠されている
無意識のストーリーを特定し、短い文章にまとめたら、次のステップはストーリーの肯定的な目的を特定することです。
これは大切な手順です。
なぜなら、この肯定的な目的がストーリーをあなたの中に固定しているのであり、それを尊重し、承認する必要があります。
例えば、私のクライアントだった45歳の女性は、同僚たちが自分のことを軽んじているように感じ、職場で悲しい思いをしていました。
さらに悪いことに、彼女は少々太り気味で、自分の外見を非常に気にしていました。
あるコーチングセッションで仕事の話になった時、彼女は次のように言いました。
今日、会社で大きな問題を解決するのを手伝ったのよ。それができる私って、大人の女の子(英語では、Big Girl=大きい女の子)よね。
それと、重要なプロジェクトでも良い仕事をしたのよ。やはり私って大人の女の子だわ」
最初に私が思ったのは、同僚たちが彼女を軽んじるのも無理はないということでした。彼女自身が自分を軽んじていたからです。
彼女は無意識のうちに、自分はこんなにも大人の(大きい)女の子なんだというストーリーを頭の中で描いていたのです。彼女がいつも太っていた理由も納得できました。
彼女に、大人の(大きい)女の子というストーリーの背後にある肯定的意図は何なのかと尋ねたところ、
その言葉を言うと、達成感や自分が有能だという感覚を得ることができると彼女は答えました。
しかしすぐに、そう自分に語るたびに、無意識にネガティブなプログラミングをしていることに彼女は気づきました。
そこで彼女は、これまでのストーリーの背後にある肯定的意図を考え、「私は痩せていて、魅力的で、有能な女性」へとストーリーを変えました。
そして、毎日毎日、この新しいストーリーを自分に語り続けました。
興味深いことに、それから数ヵ月が経ち、彼女が私に送ってきたメールを読むと、同僚が彼女に敬意をもって接するようになったと書かれていました。
さらに、ズボンも1サイズ落とし、ついに望んでいた体重になれたというのです!
ダイナミック・スピン・リリース™で無意識のストーリーを変える方法
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あなたの人生で起こっている問題や課題について考えます。
「その問題の背景にあるストーリーは何か?」と自分に問いかけましょう。
そのストーリーを短い文章でまとめます。
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次に、ストーリーの肯定的な目的を特定します。
そのストーリーを自分に語ることで、自分は何を得ようとしているのか、その背後にある肯定的意図は何なのかと自分に問いかけましょう。
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では、自分に語ってきたストーリーに関連して、自分の中に残留しているようなネガティブな感情を確認しましょう。
その感情を身体のどこで感じているかに気づいてください。(多くの場合、頭、心臓、胸、胃のあたりで感じたりします)
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そのネガティブな感情を身体から引っ張り出すと想像してください。
そして、引っ張り出した感情を自分から離れた場所に、宙に浮かせるように置きます。それは、どのように見えますか?
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そのネガティブな感情の映像をさらに2倍離れた場所に遠ざけ、流れ出るようにすべての色を抜き、さらに映像の明るさを落とします。
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その映像はどちらの方向に回転していますか?時計回りですか、反時計回りですか?
動いていないように見えたら、「回転しているとしたら、どちら方向に回転していますか?」と尋ねてください。
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では、逆方向に回転させましょう。
どんどん回転のスピードを上げていき、ネガティブな感情の映像が空中の小さな一点に凝縮されるまで、どんどんスピードを上げていきます。
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その小さな点は、あなたがポジティブに感じられるメタファー的なシンボルやギフト(贈り物)に素早く変化します。
新しいシンボルやギフトが現れたら、それが持つポジティブなメッセージを見つけましょう。
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そして、ポジティブなシンボルやギフトを身体に戻します。
以前までの古いストーリーに対する新しい感情や理解に気づきましょう。
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シンボルやギフトのポジティブなメッセージと、そのストーリーの肯定的な目的を尊重した新しいストーリーを作ります。
新しいストーリーを作ったら、それを書き留めて、一日中自分に語り続けましょう。
参考文献
ジム・レアー『The Power of Story: Rewrite Your Destiny in Business and in Life(ストーリーが持つ力:ビジネスと人生の運命を書き換えよう)』(2008年)【未邦訳】
ティム・ハルボム、クリス・ハルボム『Dynamic Spin Release™:An Introduction to the DSR™ Approach DVD series(ダイナミック・スピン・リリース™:DSR™入門DVDシリーズ)』(2012年) 【未邦訳】
ティムとクリス・ハルボムは、ダイナミック・スピン・リリース™の共同開発者です。
クリスティン・ハルボムは、国際的に著名なNLPトレーナーであり、著者、プロフェッショナル・コーチです。
NLPコーチング研究所の共同設立者であり、30年以上にわたってNLPの分野で活躍を続けています。
またクリスは、WealthyMind™プログラム(NLPマネークリニック®)の共同開発者でもあり、
同プログラムは20カ国を超える受講生に教えられ、大勢の人々が、人生に望むものをより多く作り出す手助けをしてきました。
著書『コーチング1on1で成果を最大化する心理学NLP』(GENIUS PUBLISHING、2021年)の共著者であり、
富の意識、NLPコーチング、システム思考に関する記事を複数の心理学専門誌やその他雑誌に多数発表しています。
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NLPトレーナー クリス・ハルボム(Kris Hallbom)プロフィール
著者より許可をいただき掲載しています。
https://krishallbom.com/how-to-identify-and-change-the-negative-stories-you-tell-yourself-by-kris-hallbom/
© 2024 Kristine Hallbom