著:ロバート・ディルツ
アルファ・リーダーシップとは、効果的なリーダーシップの実践に関する最新かつ最先端の知識を取り込み、共有することを目的としたリーダーシップの新しいモデルです。
このモデルは、私とアン・ディアリング(A.T.カーニーのトップコンサルタント)、
そして同じNLPトレーナー兼コーチのジュリアン・ラッセル(PPDコンサルティングの創設者)の3人が、
効果的なリーダーシップについて情熱的で徹底的な対話と議論を重ねた結果として生まれたものです。
アルファ・リーダーシップ・モデルは、世界トップクラスのリーダーたちを観察し、
コーチングすることでモデリングした一連の原則、ツール、スキルを定義しています。
1980年代前半まで、組織におけるリーダーシップ開発は異なるリーダーシップのスタイルに主に焦点が当てられていました。
これらのスタイルは、同じ職場で働く人々とリーダーとの関係に最も顕著に表れるものでした。
そして重視されるのは、特定の状況において効果的なリーダーシップを発揮する上での特徴やルールでした。
例えば、勝利を収めるリーダーは、タスクや目標に向ける注意力と、チームメンバーとの関係性に向ける注意力のバランスを取ることができます。
このバランスは、特定の状況に合わせて常に調整が求められるものです。
1980年代半ばになると、バーナード・バスの研究に先導され、リーダーシップは「取引型」から「変革型」へと移行していきました。
変革型リーダーシップモデルでは、誰かに仕事を効率的に達成させるために、特定の状況に合わせて自分のスタイルや行動を調整するだけがリーダーシップではなく、
各個人の潜在能力が発揮できるように促すこと(期待される成果を「超える」パフォーマンスを発揮させること)であるとされました。
変革型リーダーシップは、さらに4つの重要な要素に焦点を当てました。
- ビジョン
- チェンジ・マネジメント
- 継続的改善へのモチベーション
- 真のチームスピリットを促進するための信頼が果たす重要な役割
そしてこの10年間で、変革型リーダーシップは、ビジョナリー・リーダーシップとメタ・リーダーシップ(他のリーダーを指導し、育成する)のスキルを通じてさらに拡張を続けています。
その結果、次の領域における異なる種類のリーダーシップ能力の創発にもつながっています。
- 変革の推進
- コア・バリューの実現
- 一人ひとりの持つ可能性の認識
- 人材の育成とエンパワーメント
このように、リーダーシップに対する新たな視点が生み出されていく中で、リーダーは単に「上司」や「指揮官」だから影響力を持つという存在ではなくなっています。
むしろ、リーダーとは「人々が属したいと思う世界を創造する」ことにコミットしている人々なのです。
このコミットメントには、献身的に変革に取り組もうとする人々を導くビジョンを効果的に、
かつエコロジカルに顕在化させるための、特別な一連のモデルと能力が要求されます。
それは、組織、ネットワーク、社会システムの中で、自分の最高の志に向かって前進するためのコミュニケーション、相互作用、そして関係管理を伴います。
アルファ・リーダーシップは、このように発展を遂げてきたリーダーシップスキルの最先端をいくものです。
ギリシャ語で、アルファベットの最初の文字である「アルファ」という言葉は、「最初のもの」、「始まり」という意味を持ちます。
実際、leading(先導する)やleadership(リーダーシップ)という言葉は、古英語の "lithan"(英語を語源とする数少ない英単語の1つ)に由来し、
文字通り「行く」という意味であることは興味深いことです。
ウェブスター辞典によれば、リーダーシップとは「道を案内すること、特に先導すること」と定義されています。
リーダーシップの語源が「権力」「命令」「支配」などとは無関係であることも重要です。
リーダーシップとは「ナンバーワンになる」ことではなく、自らの行動によって「先頭に立ち、道を示す」ことなのです。
つまり、本当の意味でのリーダーシップとは、基本的に「最初に動く」ことであり、言葉だけでなく行動によって他者に影響を与えることです。
この観点に基づくと、効果的なリーダーシップとは、より大きなシステムや環境の中で目標を達成するプロセスに他者を巻き込む能力であるとみなすことができます。
言い換えれば、リーダーとは、組織、社会共同体、環境といった文脈の中で、何らかの最終目的を達成するために、
協力者や同僚のグループを先導し、影響を与えることなのです。
リーダーはシステムの中で目標を達成するために他者を巻き込み、影響を与える
アルファ・リーダーシップ・モデルは、私たちがリーダーシップの「3つのA」(Anticipate=予測する、Align=足並みを揃える、Act=行動する)と呼ぶものを通して、
リーダーシップの「作業空間」を構成するこれらの重要な要素に取り組むことができます。
予測することは、リーダー自身とチームや組織が活動しているより大きなシステムを認識できるリーダーとしての能力に関係します。
足並みを揃えるとは、リーダーが他者をどのように巻き込み、他者とどのように交流するかということであり、
ビジネスの目標や結果を追求する上で効果的に行動するために、自分自身の価値観や願望と他者の価値観や願望との一致を実現することです。
行動することは、ビジネスの目標を達成するために何が重要なのかを見極めること、
そして目的を明確にして一貫性を持つことで、違いを生み出す領域に粘り強く取り組むことに関係します。
リーダーシップにおけるこれらの重要な側面は、それを実行に移すために必要な3つのコア・スキルによってそれぞれ支えられています。
予測する
- 微弱信号を検知する:
コウモリのソナーシステムのように、リーダーや組織は、より大きなシステムの傾向やパターンに、それが起こる前から気づくために、わずかな合図でも感じ取って、解釈できる能力が必要である。 - 精神的敏捷性:
こうした信号に適切に対応できる柔軟性(あるいは「必須多様性」)を持つ。 - リソースの解放:
新しい状況に素早く対応できるように、十分に流動的な組織を作る。
足並みを揃える
- 具現化を通して導く:
一貫性と自分自身のアラインメントを通してパーソナルパワーを発達させ、自身の他者への影響を認識する。 - 人間関係を通した仕事の割り振り:
メタ・リーダーシップを通して、協力関係やラ ポール(信頼関係)を築き、自己組織化を促す。 - 行動できる文化の創造:
他者が勝利できる条件を確立する。
行動する
- 80/20の法則:
効率的であること、そして効果的な行動のための重要なレバレッジポイントを見つけること。つまり、適切なタイミングや場所が見極められるということ。 - 構え、撃て、狙え:
積極的であると同時に、軌道修正ができるよう、フィードバックに敏感であること。 - 貪欲な追求:
ビジネスの目標を絞り、拡張し、ビジネスがどのように価値を生み出すかを明確に理解し、自分の使命とビジネスの役割が強くつながっている感覚を持つこと。
アルファ・リーダーシップの原則、スキル、ツールは、
リーダーと同じ職場の人々、ビジネスの目標、そして彼らが行動している大きなシステムとの間の効果的な相互作用をサポートする
アルファ・リーダーシップ・モデルは、マネージャー、コンサルタント、コーチが、
自分自身と他者のより効果的なリーダーシップ能力を開発するためのツールを提供します。
アルファ・リーダーシップの焦点は必然的にビジネスに置かれていますが、
その原則、スキル、ツールは、パフォーマンスや成果を向上させたい他の場面にも適用することができます。
ロバート・ディルツ氏より許可をいただき掲載しています。
http://www.nlpu.com/Articles/AlphaLeader.htm
This page, and all contents, are Copyright © 1996 by Robert Dilts., Santa Cruz, CA.
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