アンカリング
アンカリングは、実践心理学NLPのスキルの1つで、
五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を使って、
自分が望む状態を引き出す方法です。
つまり、五感と望ましい状態を結びつける、
「条件付け」のようなイメージです。
例えば、次のようなものが、身近なアンカリングの一例です。
-
学生時代に流行っていた曲を聞いて、
懐かしいと感じる - アロマの香りを嗅ぐと、リラックスできる
-
スポーツ選手のルーティン
(イチロー選手や五郎丸選手など)
いずれも五感と特定の状態が、
結びついています。
なお、望ましい状態を作り出す引き金のことを「アンカー」と言います。
アンカーとは船の「錨(いかり)」のことで、
船が錨で位置を固定するように、特定の刺激と状態を結びつけ、
同じ反応を起こせるようにするのです。
何かを見たり、聞いたり、味わったり、触れたりしたことで、
いつも同じような状態が引き起こされるときは、
「アンカーがかかっている」と言います。
アンカリングの効果
今の自分の状態に関わらず、
「簡単に」「最高の状態」を引き出せるのが、
アンカリングの最大の効果・メリットです。
一例を挙げると...
- 緊張したときに、身体のこわばりを緩め、平常心を取り戻すことができる
- 怒りを感じたときに感情を鎮め、代わりにユーモアや笑いがあるときの状態になれる
- プレッシャーを感じる場面でも、ポジティブで楽しい状態になれる
- 告白やプロポーズなど勇気が必要なときに、必要な勇気を出すことができる
- 落ち込んだときでもすぐに切り替え、やる気があふれたパワフルな状態になれる など
アンカリングの使い方は十人十色で、
望ましい状態を事前にアンカリングしておくことで、
いつでもそれを引き出すことができるのです。
「アンカリング効果」との違い
よく似ている言葉に「アンカリング効果」があります。
アンカリング効果も心理学の用語であり、語源も同様に船の「錨(アンカー)」です。
アンカリング効果は、
最初に得た情報が基準となって判断が偏ってしまう現象のことで、
認知バイアス(思い込み、認知のゆがみ)の一種です。
主にマーケティングや営業、セールスの場面などで用いられています。
例えば次の価格を見たときに、
どちらの方を買いたいと思いますか?
商品A | 商品B |
販売価格:30,000円 |
通常価格: 限定価格:30,000円 |
どちらも支払うのは3万円で同じですが、
なんとなくBの方が、お買い得のように感じたのではないでしょうか。
これがアンカリング効果によるもので、
通常価格の5万円が判断基準(アンカー)となり、
限定価格の3万円を安く感じるのです。
このように、「アンカリング」と「アンカリング効果」はどちらも心理学の用語で、
語源と名前も共通していますが、それぞれ意味や効果は全く異なるものです。
アンカリングの仕組み・全体像
アンカリングは、特定の刺激(アンカー)と、
特定の状態を結びつける、条件付けのことでした。
例えば
- 左手の小指を右手で握ったら、やる気を引き出せるようにする
- 耳たぶを引っ張ったら、自信を引き出せるようにする
- 中指の第一関節をつまんだら、集中力を引き出せるようにする
このように、望む状態をアンカーとなる刺激に紐づけていきます。
なお、アンカーには、
様々なものを設定することが可能です。
代表的なもので言うと、上記のように自分の身体の場所を触ったり、
一定のポーズをとること、さらには写真や音楽などでも構いません。
ただし、いつアンカリングを使うかは分かりませんので、
場面や状況を問わずできるものがおすすめです。
また、刺激の内容を変えることで、
複数のアンカーを設定することも可能です。
アンカリングの手順
アンカリングの手順をお伝えしていきます。
今回は、音楽を使う方法です。
決まった音楽を聞いて、モチベーションを高められるようにしていきます。
まず、すべての手順に目を通してから、
実践していただくことをおすすめします。
- 自分が望む状態を決めます。
ここでは「自信がある時」を例にして説明していきます。 - 得たい成果を達成している人=モデルを決定し、
その人の表情や身振りや声のトーンなどを思い浮かべる。 -
「自信がある時」の自分はどのような体験をしているのか、
五感を使ってリアルにイメージし、その時の状態を感じていきます。
(もし過去に経験があれば、その時を思い出します)例えば、
- 目の前にいるたくさんの方から、大きな拍手をもらっている
- よし、やったぞ!という自分の声が聞こえる
- 身体がポカポカしていて、ガッツポーズをしている など
「目で見えるものは何か?」
「どのような音が聞こえるか?」
「身体の感覚、状態はどのようなものか?」こうした質問も使いながら、
これ以上感じられないくらい十分に、
そしてリアルに感じていきます。 -
「自信がある時」の状態(感情や身体の感覚)がピークに達する直前で、
「自信がある時」を引き出すスイッチ(アンカー)にしたい音楽を再生します。頭の中で音楽をかけるのではなく、
スマホやスピーカーなどを用いて、実際に音楽をかけます。 -
2~3の流れを何度も繰り返します。
-
最後にアンカリングができているかを確認するために、
何もしていない普段の状態で、その音楽を聞きます。
(アンカーを「発火」させてみます。)この時に、「自信がある時」と同じ状態が蘇ってきたら、
アンカリングは成功です。
以上がアンカリングの一連の手順です。
身体でアンカーを作る時は、3の手順の際に、
作りたい場所に触れたり、ポーズをとったりします。
アンカリングの効果を高める5つのポイント
①身体の場合は、普段あまり触れない場所にする
身体にアンカーを作る場合は、
以下のポイントを押さえておきましょう。
- 普段、あまり触れない場所につくる
- 普段、あまりしない触れ方をする
よく触れたりする場所や、いつもと同じ触れ方の場合、
特定の状態とアンカーがそもそも結びつきづらいです。
また、アンカーとして触れるときと、そうでないときとが曖昧になり、
アンカリングの効果が薄れやすいです。
アンカーと望む状態を、強く結びつける必要がありますので、
2-1であげたように、指を握る、耳たぶを引っ張る、
つまむなど独特かつ分かりやすいアクションがおすすめです。
なお、全米NLP協会では、
拳(指の付け根の関節)に作ることを推奨しています。
普段あまり触れることのない部分なので、
望む状態をしっかり結びつけることができますし、
また仕事中や外出先などでも周囲に気づかれることなく使えます。
さらに最大5つまで片手に設定できますので、
状況に応じて使い分けることも可能です。
②望む状態を最大限に感じきる
アンカーを設定する際には、
望む状態を最大限に感じきることがポイントです。
手順の中にも「五感を使って十分にイメージし、感じる」とご紹介しました。
以下の質問を使って、まるでその場にいるかのように具体的に想像し、
その時の状態を全身で十分に感じます。
- 見えるものは何か?(視覚)
- どんな音が聞こえるか?(聴覚)
- 身体の感覚、状態はどのようなものか?(体感覚)
ここでイメージするのは、
自分が実際にその体験をしている場面です。
映画や写真のように、
自分の姿を外から眺めるのではなく、実際に入り込みます。
NG | OK |
②望む状態を最大限に感じきる
アンカーを設定する際には、望む状態を最大限に感じている、
ピークのタイミングで設定していきます。
前後の時間を含めてしまうと、
その状態もアンカリングされてしまいます。
アンカリングを使う際に、一瞬で最高の状態を引き出すためには、
ピークの状態と結びつけることがポイントです。
④体調を整えて行う
もしも睡眠不足があったり、風邪を引いているなど、
体調が優れないときには、まずは体調を整えましょう。
アンカリングは、生理的な反応を利用しているものですので、
体調が良くないときに行っても、うまく結びつけることができません。
⑤何度も繰り返す
一度設定しても、
しばらく使わないとアンカリングの効果は薄れてきてしまいます。
定期的にアンカーを発火させて、その状態を味わったり、
設定の手順を繰り返し行うことで、アンカリングが強化されていきます。
使いたい時にいつでも使えるように、
日頃から準備しておくことが大切です。
以上が、NLPのスキル「アンカリング」についての解説です。
今回ご紹介したアンカリングを駆使することで、
どのような場面でも、自分をコントロールし、
最高のパフォーマンスを発揮できるようになります。
ぜひ日頃から活用してみてください。
そして、NLPには「アンカリング」以外にも、
仕事や人生で使える学びが豊富にあります。
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